愛の時代の暴君


蒸し暑い季節、いかがお過ごしでしょうか? 私はというと、ずっと考え続けています。。昆虫とそれを恐怖する人間、というものについて。いや、そんな遠回しに言う必要はないですね。ゴキブリについて、です。今となっては当たり前のことではありますし、それ自体がなるべく考えたくないことでもあるのだけれども、大人になったからでしょうか。自分の部屋に並んだ殺虫剤の類などを見ると、考えずにはおれないのです。生物学の本などを少し読んだからでしょうか、自ずと気に留まってしまうのです。何故あんな小さなものを我々が恐れるのかと。特に実害を齎されるわけでもないのに何故、私たちは懼れるのでしょうか。理由なんてあるんでしょうか。改めて考えてみると、とっても不思議です。一体何故こんなことになってしまったのでしょう。本来敵対するような間柄でもない筈なのに、私達は脅かしあってしまっています。本当にこれでいいんでしょうか? そのことを考え続けています。もしかして小さなつまらない誤解や欺瞞だけが、この状況を招いているのでは? 世界のどこかの紛争を、平和ボケした我々は冷めた目で客観し、ともすれば安い正論を語りがちですが、もしかしたらもっともっと皆が、この身近なことを真面目に考えなければならないのかもしれません。そしてこの点さえ解決されれば、この互いに虚しい闘いに終止符が打たれるのかもしれません。そこから平和や愛について、何か学び取れるのかもしれません。人間同士だって、互いに脅かしあう必要なんて無い筈なんですから。まず我々は、彼らと共存することはできないんでしょうか。だって、この美しい地球に生きる仲間ではありませんか。同じ祖先から生まれ、共に海から陸に上がった仲間、言ってしまえば永い戦友です。これまでも、そしてこれからも。立場も姿かたちも結構違えど、生物としてリスペクトし合ってもいいのではないでしょうか。何か助け合える関係が築けないものでしょうか。例えば、犬や猫を可愛がるようにはいかないものなんでしょうか。木々や鳥を敬うようにはいかないものでしょうか。いかないものでしょうね。なんとなく。むりむりw。…大体ありえねーんだよ、いきなり壁にひっついてたり、異常に早かったり。どっからどうきてどうやってどこいってんだよ。忍術か。スプレーかけても全然しぶといしさー。そんで好きに暴れまわった挙句に、最後は絶対仰向けに倒れて一層キモいじゃん。しかも、しかも、殺したとしても気持ち悪すぎて、暫くは黒いもの視界に入るたびに奴かと思ってビクッとしちゃうんだよね。脳内まで侵食すんなって。幻影か。マジキモいしめんどい。つかもう馬鹿なんじゃないの、マジで。
…なあんていう風に、そんなことを考えていたそんな私にも近頃、ひとつ変化がありました。ドロヘドロという漫画にはまっています。内容については割愛しますが、その中にジョンソンという巨大ゴキブリキャラがいるのです。で、これがあまりにも可愛く描かれてしまっているんです。ギュチー。始めは「ギャーこんなの描くな無理無理!」って思ってたんですけど、いつのまにか慣れ、気付けばすっかり大好きになってしまったわけで。ホントに可愛いんです。そうなってみると、あれ?ってな感じなんです。なにこのあたらしいカンジ。矛盾? じゃあ、これはこれなのに、あれはあれなの?みたいな。はいw?みたいな。私は(今度こそ)冷静に考えてしまったのです。そもそもあれを嫌っているのは、他者に押し付けられるイメージであるとか、そういう表面的な要因であって、実際には何かされたわけでもないしトラウマになるような経験もないんです。そのことに思い当たり、ジョンソンを経過した今、ひょっとして次にゴキブリが出てきてみたらどうなるのかな、と。つまり全然どうってことなかったんじゃん、怖くもなんともないじゃん、なんてことになるのではないかなあ、と。ある意味これは妄想だったりするんじゃないかなあ、と。結局は、マンガのドラゴンヘッドみたいに自ら作り上げたものを恐れていただけだったんでしょ? デスノートみたいな独善的な理念に捕らわれていただけでしょ? 製薬会社の陰謀かもよ? イジメじゃないけど、人間ってのは悪者ひとつ用意しないとまとまらない生き物だからね? 確かに「ゴキブリ」なんてネーミングは悪意的じゃね? あー、なんか可愛そうにすらなってくるわ。。そういうことに気づきだしたら止まらないよ。変革というか、改革だわ。俺は気付いてしまったんだわ。もしかして、変われる? うん、変わる! 彼らに対する認識を改める! ちゃんと生き物として接する! 愛を持つ! 俺がマザーテレサになるべきなんだ。キュリー夫人とか。始めはみんなに馬鹿だと思われるだろう。でもいいんだ。例え最初はひとりでも、いつかみんなが同じ優しい気持ちになれるよう、頑張っていけばいいんだ。凄いことをやり遂げるのは独りなんだ。となると、愚かしいスプレー一式はいらないな。捨てっかな。そこからスタートかな。核廃棄みたいにそれが人類にとって大きな一歩になるといいな。そうそう、そもそも金払ってまで買うものじゃないじゃん。もう俺はあんな卑劣なことはしないぞ。例え虫が沸いてきても優しく逃がしてやるのだ。そもそも殺虫剤だなんて傲慢の極みだよ。どうしても排除したいなら素手で闘えよ。スプレーでシュだなんて、逆に汚いわw。ユダヤ人虐殺したなんちゃらと同じようなことじゃん。彼らにしたら原爆投下と変わらんじゃん。最低。ほんと人間って最低。自分の手は汚さずに、気に入らないものは無条件排除、臭いものには蓋ですか。はぁ〜、いい身分ですねww。虫だからってスプレーで手も汚さずに殺すなんて、本気ですか? 何が巣までだ、何が暴れさせさせないだ、いい加減にしろよ。米軍か。そんなのって要は勘違いした馬鹿野郎のチープなプロパガンダに過ぎなくてさ、言ってしまえば気の触れた暴君の為す事みたいじゃないか。くっだらね。もうやめやめ!! 終わりにするよぉぉぉ!!これからは愛の時代だお!!
…なんていう風に思って清清しい気分に浸ってからからどれだけ経ってからだろうか、ある日遂にうちにも出ました。出ましたよ、風呂で体洗ってる最中に。ある意味では非常に待たれていた登場だったわけなんですが、実際出てみるとどうでしょう。どうだったと思いますか? …過ぎたるは泳ぐ猿が如し(どうでもいいって意味)ですが、結果はこうです。風呂で黒い固体を見つけた私は、全身が奮わん覚醒し、焦りまくり、プルプルに震えた手で一旦ドアから出て、居並ぶスプレーの中で最も殺傷能力が高いに決まっているものを取り、それを風呂場全体が曇るまで無心に狂おしく噴射し続けたという有様。あったのは「ぶっ殺す」「絶対逃がさん」のふたつだけ。愛とかではなかったです。変な声出てたかもしれません。理性も記憶殆ど無し。もうある意味全てがプルプル。具体的に何考えてたかも不明。滅茶苦茶よ。戦争だわw。なんかもうイカれた事件起こす厨房みたい。あわわ。しかもこの気の触れた暴君はフルチンだったのだよ。やれやれだぜ。結局、習うより慣れよっつってね。実践で解ったわ。やはりこれは固定概念やイッメージ、そのような薄っぺらいものでは全然ぜんzwnない、心よりも更に内なる本能そのものが恐れているとしか思えない。敵ですよ、きゃつらは! 絶対俺たちの敵! 昔は血迷って折り畳み椅子で撲殺したこともあるわけだしさ、とにかくキモいです。最悪。なんかこれはもう命がけでやらなきゃ勝てないぜ!こういう気持ちってなんだろう、野球のストッパーが、逆転負けされた次の日もマウンドへ向かう時の心理なのかもしれないな。永川頑張れ、負けるな・・・なんていう風になってしまったわけでして、私は焦り驚かされるのみならず、その日は更なる殺虫用具の買い集めをした上に、深夜までそんなカンジの浮き足立った思考を強いられる羽目になったわけです。試合に勝って、勝負に負けたってやつだわ。やっぱムリムリ。んで、更に更に追い討ちをかけるように昨夜は壁から首へ、忍術野郎にいっぱい喰わされたわけです。俺ったら、立ったまま仰け反るスタンディングオベーション。もちろん台所を戦場にしてぶっ殺しましたけど。大変だったなあ。もうほんとにマジで勘弁してほしいわ。次出てきたら、150%殺すから。ただ殺すだけは済まないから! ギッタギッタにしてやるから。今だって思い出すだけですんげームカついてきてるからさ、この気の触れた暴君はどうなるか知らないぜぇええ!!!!111